より善きババアへの道

ひねくれオタク女が唯一の強みである「若さ」を失った後にもこの世に居場所を見出すため孤軍奮闘する日々。

プッチンプリン

不倫は文化、という言葉を使った人間がいる。
その発言があったのがいつ頃だったかよく覚えていなかったけど、確か当時私はまだ義務教育中で、不倫なんてものはフィクションの中と芸能界にしか存在しないものだと信じてた。
だから単純に、「もてるってのはいいけど浮気は良くないよなあ」なんて考えたりした。
その頃の無垢でピュアでアジアの純情真っ盛りな私に教えてあげたい。
あなたはこの先十年弱、不倫をする人間に振り回され続ける人生送るのよ、と。
そんなかんじで、2ちゃんねるの家庭板まとめが大好物な私です、ごきげんよう。
不倫も麻薬も、ラリっちゃうのは良くないと思います。

不倫がこの世に存在するんだ!というショッキングな現実を知ったのは高校生。その時は私は受験生。
同じクラスのナントカちゃんのご両親が離婚〜とか、学校のナントカ先生とナントカ先生が怪しい〜とか、そういうレベルの遭遇ではなく、なんと不倫してる人間がうちにいた。親だった。母だった。
うちの両親というのは基本的に不仲で、二人が仲良さげに見えていたのは幼稚園の頃まで。スーパーファミコンボンバーマン3を夜な夜な両親がやっていて、時折ピクピク動く二人の方をウイを絡みながら、何となく嬉しかった記憶がある。
よくよく考えたらなんで結婚してしまったのか理解できない夫婦なんだけど、そんな仲の悪い二人をみても、まあどこの家もこんなもんなんだろうくらいに思ってた。今ならわかるけど、口きかなかったり怒鳴りあったり、そんなことばっかりなのは世間的にみておかしいんだよね。
父は仕事が忙しくて家に帰ってくるのが遅い。そんな父に母が、そういう時は父方に実家に泊まればいいと提案していた。その方が職場に近いからって。確か高校一年生の終わり。その辺から母の暴走が始まる。
母はもともと飲み会好きのDQNなのだったのだけど、明らかに数が増えた。一回帰ってきて、ご飯作って、出かけることが増えた。相変わらずちゃらんぽらんな人だな、なんて考えてた、ある日「会社の同僚からもらったライター」を見せられた。デザインを見ると、二つで一つの模様になるペアライターだった。でも母が持っているのは一つだけ。お揃いがいいっていうからさあ。安いワインでベロベロに酔った母が笑う。ラリパッパー。
多感なお年頃の娘には、あまりにショッキングな現実だった。

その一年後、私の大学進学の後に両親は離婚した。
理由は知らない。調停をしたのかしてなかったのかも知らない。
離婚のちょっと前に離婚の報告があったり、父が帰ってこなくなったり、色々あったけど、なんかもうよく覚えてない。
夜な夜な母とペアのライターを持つ「会社の同僚」の話を聴き続けたことばっかりが残ってる。この世の中には確かなものなんてないんだ、と生命保険のCMみたいなことを感想を抱いて、己の命に絶望した。

その後私は家を出る。
でもある日実家の古いパソコンを取りに行くと、知らないおっさんがリカバリをしていた。
会社の同僚のなんとかさん、と紹介されて、ああライターの人だと気がついた。挨拶しなさい、という母を無視して頭痛と吐き気を理由によるまで寝た。目が覚めた時、おっさんはいなかった。

その辺から、帰ってこいという母に反発して帰省をなかなかしなくなる私。
とうとう逃れなくなったある日、実家のドアを開けると知らないおっさんが酒を飲んでいた。おお、おかえり!おっさんは快活に笑う。おっさんの横で座ってテレビをみている弟たちの顔は能面のよう。
そしてとうとう私は家を母を諦めることにした。

社会に出て親と絶縁し、ひどい時には荒れまくっ他反動のままバカみたいに酒を飲んで、友達や後輩たちの前でひっくり返ったりしてた。
唯一それとなく事情を伝えていた友達は、そんな私に呆れることなく介抱してくれて、何も言わずにいてくれた。
両家のお嬢さんで、頑固だけどしっかり者で、私のよき理解者だった。信頼していた。信頼されている自負もあった。

先日そんな十年来の友人に呼び出されて、不倫をしていると告白された。
詳細は省くがかなりのっぴきならない状況で、猶予期間もかなり短く、状況は考えうる限り最悪だった。
相談したい。彼女が話し出す。どういう状況にあるか、何が起こっているか。聞きながら目の前がぐるぐるしてくる。気づいた怒りで指先は震えていて、目からは涙がこぼれていた。
友人と分かれ帰りの山手線に乗り込んで、号泣した。そこそこ混んでる時間帯だったのに私の両隣の席に誰も寄り付かないほどの号泣だった。
遠ざけた母がまた現れた。絶望のどん底に落ちた高校生の私が帰ってきた。ラリパッパー。不倫相手のことを語る友人は、私の知らない女だった。

そんな風に、やたらと身近な人物がプリンちゃん(家庭板だか生活板では不倫をしている女性をこう呼ぶ)になりがちな私。
友人の一件からは自分の価値観がぶれにぶれまくってて大変で、毎日毎日家庭板まとめを読み漁っては、見知らぬプリンちゃんたちが慰謝料を背負い職を失い信頼を失墜させる様子で溜飲を下げていた。
私の心情としては、

ラリってる母親憎い!許すまじ!
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一番信頼してた友達がラリった!お前も母親と同じか!
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でも身近な人が二人も不倫した。もしかしたら不倫は良くある話なのかもしれない。
みんなしているならここまで怒ることでもないのでは?
怒らないでいいことなら、こんなに二人を憎まなくて済む!!!!!
⬇︎
不倫は悪いことじゃないんだ!!!⬅︎ここに行きつかないために不倫話を読み漁り揺らぐ価値観をなんとか保ってる

実際こういう考え方になっているのに気がついたのは昨日のことで、こうなってるんだとわかってないうちは本当にしんどかった。最初はただカタルシス感じられるから読んでるんだと思ってたけど、よくよく掘り下げたらかなり根深い問題だった。忘れないようにここに書き記しておく。

なんでそういうラリパッパなことになっちゃうのか、私は本当に理解できない。でもそれがすごく怖い。
不倫なんてしないと思ってた彼女らが不倫をしたのだから、もしかしてなんかのはずみで私もしちゃうの!?なんて実態がわからないから変に不安になったりしてしまう。
でも理解できたとしても、理解できるなら私も・・・なんてどっちにしろドツボにはまりそうな気もする。
ああ、良くないなあ、不倫。
いつの日かプリンちゃんたちを私の手でプチンと握りつぶすことができれば、この憎しみを手放すことができるんだろうか。
本当に、生き辛くて嫌になる。