より善きババアへの道

ひねくれオタク女が唯一の強みである「若さ」を失った後にもこの世に居場所を見出すため孤軍奮闘する日々。

ストレスを爪の先に塗って

ペディキュアday (通常盤)

ペディキュアday (通常盤)

無趣味無趣味と自分のことを言っているけど、どうやらネイルは趣味っぽい。
きっかけは去年の秋の引っ越し。作用卓の導入に伴いセルフジェルネイルを始めた。
ライト買ったり、プチプラのジェルネイルやパーツを通販したり。
引っ越し前もマニキュアを集めて塗り替えたりはしてたけど、やっぱり乾くまでの時間がネックで、結局ジェルに落ち着いた。
こまめにやらなくていいし、爪が丈夫になるからズボラな私にはあっていたんだと思う。
昨日もネイルチェンジをした。久々にうまくできて、今日は一日指先を眺めてニヤニヤしてる。乗せたストーンがキラキラ光って超可愛い。私自身じゃなくて私の爪かわいい。自画自賛。とはちょっと違う?
こんな喜びを感じられる日が来るなんて、多分五年くらい前までは思いもしなかった。

実はもともと、爪を噛む癖があった。

子どものころからずっと。ずっと親や親戚から注意され続けてきて、更には友達からも「いたそうだからやめなよー」と言われてきた。
どうしてもどうしてもやめらなかった。やめようと思って何度も何度も挑戦したけれど、伸ばしていても割れてしまうことが多くてすぐに断念してばかり。多分爪が長かったことがないから、育ちにくかったんだと思う。今でも十分薄いけど、高校生の頃なんて本当にぺらっぺらだった。

そんな状況から抜け出そうとしたのが、たしか社会人一年目の秋だか冬。

思い立った理由は色々あった。中でも大きい理由が二つ。
一つは仕事柄手元を見られる機会が多くて、いつも恥ずかしかったこと。下手したら書類に血をつけたりしちゃってて、それがすごく嫌だった。やっぱり毎日のことだから、どうにかしたいなあと思い出したのがきっかけ。
もう一つは、子どもの頃のストレスがきっかけで爪を噛む癖がついてしまうことが多いと聞いたこと。
何回かこのブログでも書いているように、うちの母、まあよく考えたら父もだったんだけど、あんまりいい両親ではなくて、少なくとも私とは反りが合わない人たちだった。
家を出る前は散々な目にあっていたし、大学時代は散々やりあったし、就職する時は両親に何も言わずに色々進めて決めたりしてた。
そんなことがあった後なので、今だに親から受けたストレスが原因でついてしまった癖で、さらに自分が自分にストレスを与えてるっていうのが如何にもこうにも嫌になった。一回リセットしたい。そんな気持ちが吹き出して、変化にビビる私の背中を押した。

ググって見ると「深爪矯正」って割といろんなところでやっている。
まとめサイトに載ってる経験者の人の話なんかをみながら、比較的家から近いネイルサロンに相談のメールを入れた。
現状の写真を送ったり、時間の調整をして迎えた施術初日!

親から召集命令がかかり、サロンに行けなくなってしまった。

もうこれはもう、激おこってもんじゃない。しかも呼び出された理由も理由で、どうにもこうにもならない私の絶望は日暮里の駅で吐きまくるほどだった。駅員さん、あの時は本当にごめんなさい。
でもまあこれがきっかけでいよいよ親と疎遠になる決心がつき、意地でも「気が利かなくてデブスな私」から変わってやろうという意志を持てるようになったので、吐いたのも無駄じゃなかったと思いたい。
そんな逆境があったのだけど、ネイリストさんの好意で翌週の同じ時間に施術をしてもらえることになった。
確かそれから三ヶ月か半年弱、矯正をしてもらった。

最初はスカルプという、ジェルにアクリルの粉を混ぜたもので人工爪を作って長さを出してもらった。
人工爪はアクリルなので、分厚くてぷっくりしている。これなら噛みたくても噛み切れないし、剥がしたくても生爪ごといきそうでできない。
この状態でまずは「噛まないこと」に慣れていきましょう、というところから始まった。
手のひらから指先のその先に、爪の頭が見えたこあの感動は今でもよく覚えている。生まれて初めての光景で、なんだか現実感がなかったけど、すごくすごく嬉しかった。やっと人間になれた気がした。
それから毎月、はがれかけてくるとネイルサロン行って施術してもらう。
私の場合はスカルプは最初だけで、あとはジェルでの補強がメインになった。
元ひどい状態から施術を始める人もいるし、中には辛抱ならなくてジェルであっても噛み切ってしまう人がいるらしい。
私は幸いにも年齢が若かったからか、補強さえしていれば順調に爪が伸びてくれた。
ネイルサロンにいくたびに、ボロボロだった指先が綺麗になっていく。
桜貝色に色づいた雫が、指先に乗ったまま固まったみたいにぷっくりツヤツヤ。
飽きもせず、毎日毎日ながめてた。人並みに慣れたことが嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。

今も自分でネイルを仕上げた後、ニンマリ満足感に浸りまくっている。
楽天で買い漁った色々な色のジェルを混ぜたり、そのまま塗ったり、スタッズでリボンを作ってみたり、綺麗なストーンを集めて固めたり。流石にプロほど上手にはできないけど、そこそこの仕上がりにはなるし、自信作の時には人に見せびらかしたくなる。
前までは、指先を見られるのが怖くてしょうがなかったのに!
さらに、大雑把な性格の割りにちまちました作業ゲーが好きな私には、セルフネイルというもの自体と相性が良かったようで、いいストレス発散にもなっている。
常時ごちゃごちゃしまくっている頭の中が、もくもくとネイルをする時は空っぽになる。そりゃうまく行かなきゃ暴言も吐くけど、基本的にはすごく楽しい。多分、牧場物語で延々作物育ててるのと近い楽しさ。
うーん、やっぱりこれ、趣味って言ってもいいのかな。

なんかもやもやした気分の時、だいたい指先もささくれてる。そのままだとささくれた指先をみて、さらにもやもやが加速する悪循環に陥ってしまう。
そういう時には、爪を噛むんじゃなくて、ジェルネイルで指先をぷっくりツヤツヤキラキラにしてあげる。
何層も重ねるジェルの間に、嫌なこととか悲しいこととかを閉じ込めて、固めてしまうのだ。
そんな風にして出来上がったネイルはキラキラしてて、あまりの可愛さにもやもやなんて吹き飛んでしまうもんだ。
ジェルの間に隠したストレスだって、一ヶ月もしないうちにジェルごとペロンと剥がれていく。
ストレス社会に生きるアラサーOLの、そんなマニキュアday。