より善きババアへの道

ひねくれオタク女が唯一の強みである「若さ」を失った後にもこの世に居場所を見出すため孤軍奮闘する日々。

Fall In Love アイドルの神様 この人でしょうか

その神様との出会いは、弟の何気ない一言だった。

前田敦子かわうぃーwww」

4つ離れた弟はその当時確か中学生で、私の弟だというのにリア充で粋がっててウェーイwwwだった。
というか、今でも十分ウェーイwwwだ。
LINEで実の姉に友達申請をしても、「誰このチャラ男しらねー」とブロックされてしまうレベル。姉って私のことだけど。
まあそんな弟が、おそらく当時学校の仲間内で話題になっていたのだろう「AKB48」に興味を持ち出した。そしてとりあえず真ん中で踊って目立ってる女の子をかわうぃーね!と言い出した。
どうでもいいけど、こういう「ノリ」で可愛がるって行動は一体どういう心理の働きが起きてるんだろう。教えてエロい人。
それはさておき、当時の弟は私と出かけた家電量販店で、「神曲たち」の特大パネルを指差していったのだ。前田敦子かわうぃーwwwと。

姉としては可愛い弟の興味のあるものといえば気になるわけで、可愛い弟のことになれば少々感情的にもなってしまうわけで。

「はあ?AKB48好きなの?気持ち悪。オタクじゃん。秋葉原のキモいオタクが好きなやつじゃんAKB48って。
つうか前田敦子?髪型ヘルメットじゃん。ブスじゃん。可愛くないじゃん。あんた趣味悪すぎね?」

ボロっかすにdisったことを今でも鮮明に覚えている。自分が十代の頭からオタクで腐女子で百合厨ということを棚に上げるどころかどこか遠いお山の向こうにぶん投げて、口汚く罵った。とんでもない理不尽さである。
哀れな弟はそれからしばらく姉の前ではAKB48の「え」の字も口に出さなくなった。

懺悔します。第一印象は最悪でした、かみさま。

そんな私があれよあれよという間にAKB48にハマる話はいずれ書くとして、今回は今の私にとっての「前田敦子」の話を書きたい。
そんな気分になったのはきっと先日総選挙をやっていたからで、そこでいろいろと思うところがあったからだろうけど、とにかく今は前田敦子の話をするの!

第一印象でヘルメットブスとあっちゃんをdisった私だけれど、今やあの子の声を聞けば涙が出るし、笑顔を見たら涙が出るし、なんかとにかく前田敦子と聞くと泣けてしまう。
あっちゃんが笑っていれば、それだけで世界は存在に値する、と真面目に思うこともある。
「君が笑うと嬉しくて 明日がなくても構わない」マジこれ。
それくらい尊い。それくらい可愛い。それくらい信奉してる。

ぼろぼろになりながら、絶対的エース、AKB48のセンターという茨の道を歩き続けた彼女は誰よりも輝いていたし、神聖だった。

AKBを好きだった頃はまだ学生で現実的にピンと来てなかったんだけど、今社会人になってみて思い返すと、あっちゃんのいた状況って異常だった。
私より年下の女の子が、何しようと絶対に容赦無く叩かれる場所で仕事をしなきゃいけない過酷さったらない。
仕事ですら一人の人に会いに行くのも苦痛で、ちょっとでも嫌な顔されれば逃げ出して二度といきたくないし実際行かなくなる私じゃあ絶対に耐えられない。自分でも引くほど根性なしだもん。
どういう気分なのだろう。どこに行っても自分をボロクソにdisる人たちがいるっていうのは。
その人たちと同じくらい、ほぼ無条件に自分を愛してくれる人がいるというのは。
期待と、プレッシャーと、圧力と、とにかく他人からいろいろなものを勝手に背中に乗せられてしまいながらも、進み続けるというのは。
私はできるだけ責任から逃れていたいし、いつまでも身軽に気軽にフラフラしていたい。
期待されるのもがっかりされるのも気分悪いから、できるだけ他人から放っておかれたい。というか、人付き合い嫌いだし他人が怖い。
そういう感じだから、あのときあっちゃんの置かれていた状況って本当にやばい。そりゃ彼女は自分でアイドルになることを選んだのだけど、その選択の結果が、あんまりにも重い。それをあの細い身体で必死に受け止めいた姿はあんまりにも尊い。

そこまでして得たかったものって、どういうものなんだろう。
他人からの期待を跳ね除けて、自分にも期待しないで、夢もあいにく持ち合わせていない私は、想像もつかない。
そこまで捧げて、何になるんだろう。
彼女は、あっちゃんは、何かを得ることはできたんだろうか。
私がそれを知る機会は未来永劫ないだろう。同じ答えを得ることも、まずない。だからわからない。わからないけど気になってしまう。

神様は今笑顔でいるだろうか。
この世界にまだ価値はあるだろうか。

瞬間最大風速60m/sのあの笑顔を思いながら、私は今日も誰かの神話に生きている。