より善きババアへの道

ひねくれオタク女が唯一の強みである「若さ」を失った後にもこの世に居場所を見出すため孤軍奮闘する日々。

サンライトパワーメークアーップ

悲しきかな社会人なので、平日の朝は毎日メイクする。
いくら寝ても目は開かないし、季節の変わり目はニキビが出るし、そんな諸々と毎朝戦っている。
ところで先日、二十歳を過ぎた人間の顔にできるのは「ニキビ」じゃなくて「吹出物」だよ、と言われてたいそうショックを受けた。
私が毎月格闘するのはニキビじゃなくて吹き出物。一気に老けた感じがする。辛い。大人になるって、こうして色んなものとお別れすることなんだろうな、なんて感傷的になる。

でもまあ、大人になるからメイクの楽しみも知れるわけで。
私のメイクデビューは二十歳。一般的には高校生でとか、大学入学時にデビューするらしいので割と遅め。
前の記事にも書いたように、「女っぽいもの」に対して思うことがあったのでなかなかデビューできずにいた。
今となってはきっかけなんて思い出せないんだけど、ある日思い立ってアットコスメを読み漁ったのは覚えてる。たぶん「ちょっとやってみようかな…」くらいの気持ちから始めたんだと思う。
ちふれセザンヌ、CANMAKE、ケイト。プチプラコスメは初心者の味方。
ベージュとか茶色いアイメイクをして、初めて実家に顔を出した時には、すごくドキドキしてた。
うちの母は「女子力」と言うものに一家言ある系の人種で、スイーツ(笑)的なところがある。
そんな母にメイクの甘さを罵倒されるかと思いきや、いつになく真剣な顔でメイクの仕方について語られた。図まで描いてた。ちょっとした講義が始まった。すぐにお腹いっぱいになった。
母としては、基本的に本と漫画に興味が偏ってる女っ気のない娘に対して諦めもあったようで、その娘が化粧に興味があると知ったらにわかにテンションが上がってしまったみたいだった。
「最初にいってくれればさー!一緒に買いに行けたのにさー!」
そうすねた母のことは、今でもよく覚えている。
この人にはこの人なりに夢見た「母娘」があったんだな、と申し訳なく思ったことも。
この時点で私と母の関係はこじれまくってるんだけど、これはまた別の話。

私の化粧デビューの思い出は、こんな感じ。

その後学生時代は気になったプチプラコスメを片っ端から試して合う合わないの傾向を分析してた。特にアイシャドウパレットが好きで、気になるのはすぐに買ってた。まぶた2つしかないのに。
大学卒業ちょっと前から社会人一、二年目は金遣いの粗さもいくらか落ち着いて、アットコスメにかわり化粧板を見ることを覚えた。エスプリークとかコフレドールとか、プチプラじゃないコスメを買い出す。コフレドールのくるくるチーク、すごい可愛くて2つも買った。ほほ2つしかないのに。

そして今、月に一度のお楽しみ、化粧カウンターでのお買い物のために毎日働いてる。

化粧カウンターってとても怖い。
ものすごく明るい証明の下に、近所のドラッグストアと比べて一桁以上違う値札のついた商品が並んでて、きらきらしたカウンターの向こうにはガッツリメイクで武装したお姉さんがギラギラした目でお客を見てる。
私みたいにコンプレックスの塊みたいな人間にとっては、品定めをされているようですごく居心地が悪い。
それこそ最初は怖くて怖くて、早足で駆け抜けるのもやっとだった。
カウンターデビューの日なんて、「今日はカウンターでこれを買う!!!」と決めて、意気込んで、決死の覚悟で臨んだりした。
まだ三回、3つしか買い物をしたことがないけれど、プロの意見を聞けるのはとても貴重だとしみじみ感じる。
特に私のメイクは独学なので、化粧直しの仕方とかスキンケアなんていうのは勉強になる。
なにより、自分の知らなかったチャームポイントを教えてもらえるのが嬉しい。
自分では平々凡々以下だと信じて疑わないこの顔に対して、肌が綺麗、色が白い、まつ毛が長いなどなどコメントを貰えるとはっとする。
そりゃあ社交辞令だと思うけど、自分の顔の中で一つお世辞を言うとすればここなんだな、というポイントがわかることにはかわらないし。
一つでも多く自分を好きになれる要素が発見できれば、少しは「いい女」に近づけるだろうと信じてる。
未だに怖い化粧カウンターも、「大人のいい女」になれば怖くなくなるんだろうな。

そんな風にメイクについて考えながら、今日もコスメを買うためにメイクをして仕事に行く。
昨日より少しでもいい女に。見かけだけでもいい女に。
メイク道は奥深いのだ。