より善きババアへの道

ひねくれオタク女が唯一の強みである「若さ」を失った後にもこの世に居場所を見出すため孤軍奮闘する日々。

「少しもサムくないわ(震え声)」

アナと雪の女王を見に行ってきました。(一部ネタバレを含みます)

世間的にはすさまじく人気だし、私自身ディズニーは好きだし、人からは勧められるしで見ない理由はなかったのだけれど、見るきっかけがなくてスルーしていた。
多分、いつもだったらそのまま見ないままで、適当にオチだけググってわけ知り顔でハーンとかフーンとか言って終わりだっただろう。
ところが先日遊びに誘ってた友達と、当日の待ち合わせがどうとかの連絡を取っている時に
、なんとなくでアナ雪の話になり、なんとなくまだ見ていない旨を話したところ、

「見てないとかあり得ない。今後の付き合い方を考えさせて欲しいレベル」

と言われてしまった。
これはいよいよ見ない理由はなくなったし、いよいよ見る理由ができた。こんな形で数少ない友達を失うわけにはいかんと思い立って、早速買い物の予定を変更してその友達と見に行くことにしたのである。
高校時代からの友達との付き合いを考え直させるって、アナ雪ほんとやばい。でも本当にやばいのは友達。やはり私の友達なだけあるやばさ。ちなみに彼女はすでに3回見ていたらしい。そんな人テレビの中にしかいないと思ってた。パない。

そんなこんなでやっとこ見に行ったわけだけど、うん、とても面白かった。
前述したように私はディズニーが好きだし、子どもの頃からディズニー映画を見まくってきた。急に歌い出されても全く動揺しない、よく調教されたディズニー好きだ。今でも辛くなればハクナマタタと歌ってみる。
見たのは日本語吹き替え版だったけど、前評判通り主役二人はとても歌が上手だったし、セリフ部分も違和感がなかった。

とかなんとか言ってみたけど、ぶっちゃけ映画に詳しいわけじゃないから大したことなんてかけない。なので書きたいこと書く。いつも書きたいことしか書いてないけど。

映画を見ながら、自分が一人暮らしをはじめた頃を思い出した。

四人兄弟の一番上で長女の私。母が若い時に産んだ子どもであることや、父が仕事人間であまり家庭を構わないことなんかが理由だったのかどうなんか今だによくわからないけど、実家にいた頃は精神的なところで頼られることが多かった。
きょうだいとは歳がはなれているし、母は中学生で精神の成長が止まったような性格だし、私自身しっかりしていないといけないと強く思っていた。しっかりというのは、正しくとか、強くとか、そういうの。
そんな感じで18年間、それなりに楽しく、でもその何倍もさみしさとか生き辛さを感じて生きてきた。
そして大学進学、両親の決定的な不仲をきっかけに、私は一人、大都会東京に移り住む。

その日から築年数が母の歳と同じ木造アパートの、ボロッボロの1kが私の城になった。

引越しだとか暮らしの準備とか、最後まで母に頼り切りだったことは今でも後悔している。出て行くと決めたくせに、その瞬間に共依存の関係を清算しようとしなかった自分を責めたこともある。でも同じくらい強く思う。出て行くと決めて、それを本当に実行するだけで、精一杯だったのだ、あの頃は。

そこから6年、私はそのオンボロアパートで生きてるんだか死んでるんだかわからない毎日をもがきながら生きるのだけれど、その話はまた今度。少なくとも今言えるのは、もう二度と東京都23区内には住みたくないということだけだ。

そんなことを、鑑賞中に思い出していた。
自分の力をコントロールするために、誰にもしられないために、「しっかりしなきゃ、隠さなきゃ」と一人閉じこもってもがいていたエルサが、妹との喧嘩をきっかけに今まで抱えてきた鬱憤を爆発させて家出する。
「もうええねん、お姉ちゃんのことはほっといてや!!好きにさせたって!!!」
きっと妹のアナも、エルサのそれとは違う種類とはいえ、同じくらいの鬱憤を抱えていたはず。でもあの瞬間、そんなことより自分が楽になりたいという願いが勝った。
とりあえず飛び出して、自分のことなんて誰も知らない、一人で居られる場所を求めて、それまで我慢していたものを解放して。義務感や見捨てられる恐怖に怯えて暮らすより、孤独でも気楽に生きられる日々をエルサは選んだ。
多分、私が一人暮らしをはじめた時と同じように。
そう思うと、雪山でエルサが一人歌いながら氷の城を作っていくあのシーン、泣けて泣けて仕方がなかった。レリゴー、レリゴー。自分と同じ「長子、長女」の業を背負った同胞の魂の叫びに涙が止まらなかった。
個人的にはあのシーンがクライマックス。

それからまぁ、いろいろあって、結局エルサはアナと和解してお城に帰って、再スタートを切る。
私といえば、昨年末に母に絶縁を宣言し、今はオンボロアパートを離れまた違う場所で暮らしている。
たまに揺り返しがあったりもするけれど、私は元気です。
おそらくこの先、私がエルサのように「実家」に帰ることはないだろう。帰ってしまえばその瞬間、今の幸せが崩れそうな気がするから。そして恐らく、それと同時に、私自身も崩壊する。そんな予感がある。
なので正直、城に戻れるエルサが羨ましかった。自分の意識だけじゃなくて、環境も変わってくれるって、すごく羨ましい。
でもそんなのは昔々、あるところにいたプリンセスにしか降りかからないラッキーなので、今を生きるド庶民の私はそんなラッキーに期待せず、今抱えている幸せを大事にするしかない。私は私なりの方法で、私なりのハッピーエンドを目指してく。
もしできるなら、あのオンボロアパートの一室で、布団に包まって呻いてばかりだった私に会えるなら、鬱陶しがられても歌ってあげたい。
レリゴー、レリゴー。
ええんやで、そのまんまで。そのまんまでも、幸せになる方法なんて、なんぼでもあんねんで。

ところで、エルサの氷の城にアナがやって来た時のやりとりを見て死にたくなったのは私だけ?
「あー、姉さん、雰囲気変わったね、うん、そういうのが好きなんだ、うん、うん」
鬱憤を晴らす過程ではっちゃけて、それまでと全く違う雰囲気の服装したり小物を持ち始めた私に、きょうだいたちが向けた戸惑いの視線が思い出されて死にたくなったんだけども。
なんだろうね、今なら寒すぎる行動をしまくってたこともわかるんだけど、真っ最中の時は必死で何も見えなくてね。
エルサ姉さんが氷の城のことを思い出して、まくらに顔うずめてジタバタする日が来ないように願います。ああ、輝かしき、黒歴史